アフリカの森の日々—わたしの愛したチンパンジー
ジェーン・グドール著 赤尾秀子訳 BL出版 2002年 タンザニア 小学校高学年から

1960年から40年にわたりアフリカで野生のチンパンジーを研究してきた著者が、その出会いから現在までの経過を語る。チンパンジーは、子育ての様子やコミュニティの性質などが驚くほど人間に似ており、知能も高い。チンパンジーの存在を理解することで、人間本来のあるべき姿や生命について考える示唆に満ちた本。著者が単なる研究対象としてでなく、愛情をもってチンパンジーと心を通わせていることが写真からも伝わる。森林破壊や密猟によって100年前の200万から今や15万以下に数が減ってしまった現実に目を向け、今何ができるかという具体的な提案をもってプロジェクトをつくり、子どもたちに希望を託した点でも貴重な本である。


砂漠の虫の水さがし ★
山口進著・写真 福音館書店 2000年 <たくさんのふしぎ傑作集> ナミビア 小学校中学年から

幼い頃読んだ本をきっかけに、砂漠の生き物に興味を持った著者が、20年来の夢だった南西アフリカの砂漠に行き、猛暑と乾燥を生きぬく生き物を取材して書いた写真科学絵本。著者は初めにボツワナ共和国のカラハリ砂漠で動物を観察するが、木がまばらにはえた茶色い風景は、著者の思っていた砂漠と違う。砂だけの世界を求めて、1000キロ西のナミビア共和国のナミブ砂漠に向かう。日中気温40度、砂丘の表面が60度にもなる砂漠にも生き物がいる。鍵となるのは水。数日に1度しか出ない霧の中で逆立ちをし水をとるサカダチゴミムシダマシが圧巻。ストーリー性のある構成で読みやすく、写真も珍しい。アフリカ大陸の自然の多様性がわかる1冊。


ぞうの子ラウルとなかまたち
キャサリン・ペイン著・写真 水原洋城訳 岩波書店 1994年 <かがくとなかよし> ケニア 小学校低学年から

ケニアのキリマンジャロ山のふもとに住むアフリカゾウの群れを観察し、子ゾウのラウルを中心にゾウの生態を紹介する写真絵本。生まれたばかりのラウルはおかあさんにくっついてばかりの甘えん坊。ゾウの群れは、子連れのメスだけが何頭も一緒に行動し、一番年長のおばあさんゾウがリーダーになる。群れ全体で沼地をめざして移動する様子、子ゾウを危険から守る様子、大人のオスの群れとの遭遇などを臨場感のある写真で伝える。生物学者の著者はゾウが低いゴロゴロいう音を出してコミュニケーションをとることに興味を持ち、どんな場合にこの超低周波音を出すのかを中心に観察している。文章はわかりやすく、子どもの興味をそらさない。

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©Hidenori Motai

生きもののおきて
岩合光昭著 筑摩書房 1999年 <ちくまプリマーブックス> タンザニア 小学校高学年から

動物写真家が、ライオン、ヌー、バッファローなどを中心に、アフリカの野生動物を紹介する本。1982年8月から84年3月までの1年半、タンザニアのセレンゲティ国立公園に滞在した著者が撮影した多数のカラー写真は、サバンナに生きる動物たちの、生と死が隣り合う日常をリアルに映し出している。多くの野生を残す一方で、セレンゲティ平原を中心とした周辺地域は野生動物保護区域に指定され、公園境界の外側でも年々人口が増えつつあり、人の行為が野生動物たちの本来の生き方を変えてしまうことを著者は懸念する。アフリカの自然を通し、人と自然の共存、地球上のあらゆる生命に共通するルールついて考えるきっかけとなる本。

〜「アフリカ子どもの本プロジェクト」作成 アフリカに関する児童書おすすめリスト〜
このリストは、「アフリカ子どもの本プロジェクト」が作成したものです。日本の子どもたちに、アフリカのことをもっと知ってもらうためにぜひ読んでほしい本を選びました。
●配列の順番 ジャンル別→書名50音順
●2007年8月の時点で入手できない本は除きました。その後品切れになった本は、書名の後に*をつけました。
●作品の舞台や、登場人物に関連のあるアフリカの地名を記入しました。
物語絵本
昔話(昔話絵本、昔話集)
児童文学(小学校低学年〜、小学校中学年〜、小学校高学年〜)
ノンフィクション(歴史・伝記)
ノンフィクション(地理)
ノンフィクション(社会問題)
ノンフィクション(文化・暮らし)
お父さんゴリラは遊園地
山極寿一著・写真 新日本出版社 2006年 <ドキュメント地球のなかまたち> コンゴ民主共和国 小学校中学年から

野生のゴリラの家族関係や生態を写真とともに伝えるノンフィクション絵本。大きな白い背中をもつお父さんゴリラのまわりで子どもたちが安心して楽しく遊ぶ様子は、まるで遊園地のようだという。大きな包容力をもって子育てに関わり、子どもたちに仲間や自然とうまくつきあうことを教え、みなしごゴリラを守るお父さんゴリラの姿は、人間のお父さんの参考にもなりそう。もともとは記録用だったせいかピントのあまい写真もあるのは惜しいが、著者がゴリラとの会話もできる動物学者なので、ゴリラ一家の仲間に入れてもらったような気分で読める。ゴリラの言葉や遊び、様々な表情が紹介されているのも楽しい。



ゴリラ図鑑
山極寿一著・写真 田中豊美絵 文溪堂 2008年 コンゴ民主共和国ほか 小学校高学年から

ゴリラ研究の第一人者が紹介する、ゴリラの最新情報が盛りこまれた図鑑。約300種類の霊長類の中で、ゴリラ属は、人間と同じヒト科に分類される類人猿だが、その生態は近年まで正しく伝わっていなかった。本書は、長年ゴリラを身近に観察してきた著者の明解な文と親しい眼差しをもつ写真により、身体の特徴や生息地、社会構造や森での暮らしぶりなどを興味深く伝えている。また、長年狂暴な野獣として誤解されてきたゴリラと人間の歴史、危機にある熱帯雨林のゴリラの保護活動、野生のゴリラに会いにいくための手引きまで、広い視野でゴリラの真実の姿に迫る。補足のイラストは精緻で、ゴリラの仲間のオランウータン、チンパンジー、ボノボも紹介されている。

アフリカゾウ56頭移動大作戦
神部俊平著 学習研究社 2002年 <学研のノンフィクション> ケニア 小学校中学年から

アフリカゾウの保護に取り組む日本人獣医師と、ケニア人レンジャーたちのドキュメント。危険を覚悟で、なぜ野生ゾウたちを200キロも離れた土地へ移動させたのか? 疑問を抱きながら劇的な展開に引き込まれて読み進むと、ゾウが住民に被害をあたえていること、その元凶が密猟にあることなどがわかってくる。人とゾウが共存する道を探り、困難な作戦を決行した人々の葛藤も伝わってくる。ケニアの風土やゾウの生態を親しく伝える写真のほか、象牙を切られたゾウや燃やされた象牙の山などショッキングな写真もあるが、密猟と密輸の厳しい現実や、特に日本こそが密輸大国であると知ることで、野生動物の保護が切実な問題として伝わるだろう。



あいうえおカメレオン
増田戻樹文・写真 偕成社 2009年 マダガスカルほか 幼児から 

世界に約120種類知られているカメレオンは、ほとんどがマダガスカルとアフリカ大陸にすんでいる。色、大きさ、頭の形が少しずつちがう何種類ものカメレオンを、色鮮やかな写真で紹介する絵本。長い尾を上手に枝にからめて、えさをとったり、ひなたぼっこをしたり。伸びちぢみする舌でえものをとる瞬間や、脱皮の様子も興味深い。左右にとびでた目のせいか、どの写真も表情豊かでユーモラス。「あたまかざりが いろいろで うれしくなっちゃうカメレオン」というように、五十音で始まるリズムのいい文章がついているので、声に出して読みながらページをめくると楽しい。

パンサーカメレオン
ジョイ・カウリー著 ニック・ビショップ写真 大澤晶訳 ほるぷ出版 2005年 <いきもの写真絵本館> マダガスカル 幼児から

マダカスカル島にすむパンサーカメレオンを主人公にした写真絵本。単なる知識絵本ではなく、リズム感のある文章で書かれた物語仕立ての構成になっており、幼い読者でも楽しんで読めるよう工夫されている。色鮮やかなカメレオンや、枯れ葉そっくりのヤモリなど、ユニークな生き物たちの生き生きとした表情が魅力的。巻末では見開きでカメレオンの簡単な紹介がされており、その大きさ、食べ物、体の色の変化などの生態について知ることができる。



動物大図鑑 ほ乳類アフリカ編
NHK「はろー!あにまる」制作班編 イースト・プレス 2008年 <NHKはろ〜!あにまる> 小学校中学年から

テレビ番組「ダーウィンの動物大図鑑 はろ〜!あにまる」に登場する世界各地の動物を紹介するシリーズの1冊。アフリカ大陸とマダガスカルの哺乳類37種を生息地別に紹介し、1冊でアフリカの動物を一覧できるハンディな図鑑。1見開きに1種類の動物をとりあげ、体の特徴をはじめ、食べ物、すみか、子どもの様子などをわかりやすく解説する。仲間の動物の紹介や、ナビゲーター役のDr. ダーウィンによるミニ情報も興味深い。画面は小さいが、動物たちのいろいろな表情をとらえた写真をたくさん見ることができ、動物の世界に楽しくはいっていける。総ルビ、索引付き。幅広い年齢層に向く。


ミーアキャットの家族
江口絵理著 内山晟写真 そうえん社 2010年 小学校低学年から

ミーアキャットは、アフリカ南部のカラハリ砂漠に生きるマングース科の小形ほ乳類で、地面に巣穴を掘って、家族単位の群れで暮らしている。この絵本は、そのミーアキャットたちが後ろ足で立ち上がってひなたぼっこをしている様子、赤ちゃん同士で遊ぶ様子、お姉さんが子守をする様子など、おもしろい写真を並べて、家族の暮らしぶりや生態を伝えている。自然の状態をそこなわない程度に擬人化されている文章も、わかりやすい。ただ読点が少なく、文字をおぼえたばかりだと読みにくいので、ある程度文章を読み慣れた子どもにすすめたい。